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zoom RSS ユダヤ人とアイルランド人     本多敬

<<   作成日時 : 2010/12/12 21:26   >>

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アイルランド西部を舞台としたシングの戯曲「西の世界から来た色男」。チェコ語翻訳者は、「西」という言葉は、チェコ人にとって、地理的且つ文化的に「西欧」を表すと強調した。アイリッシュは、それならば、私達の国は東ヨーロッパに属すると言った。固定した位置は存在しない。文化的に相対化せよ!

・ダブリンに来たジャンヌ・モロー、祖母がアイリッシュと言っていた。コメディー・フランセーズの役者ジャンヌはブニエル映画でデビューした。当時衣装係はジャンヌを醜い女性と考えて全身を洋服で隠そうとした、とか。実際はなんでもないのに、いつもデュラスからは、「あなた、苦しんでいるんでしょう」と同情された。憂鬱な表情が実存的で、50年代の観客に受けた

"単なる肯定"と"二重否定"

α;short story 無慈悲な"単なる肯定"。「犬とアイリッシュはお断り」。1950年代の英国人の家の掲示板の文句だった。実際に彼等は犬だった。ロンドンに辿り着いた人々は疲労と空腹で公園で死んだ。アイルランド人がアイルランド人である、"単なる肯定"。ああ、なんと無慈悲な!
β;"Here comes Everybody"の理想も空しく、アイルランド人の移民の歴史は自己否定の歴史だ。アメリカ人となる。90年代ケルトの虎、史上初の高景気とともに故郷に帰還した時、二重否定の恩寵は起きなかった。米国アクセントの人々は孤独のあまり、恋人相談所に駆け込んだ



・アイルランドへ行った最初の一年間、毎日IFCに通っていた。面白い仲間が沢山できたし、七年間で一番充実していた。絵描きや詩人、役者・・・その頃に知り合ったアイリッシュが、最近Facebookの友達になり,当時の事をよく覚えている。嬉しいことだ。

・フランス人のマリーもIFCの仲間。大島プロダクションに交渉しIFCでの上映権を取り付けた(「絞首刑」)。ロンドンへ引っ越した後、ある日、切符売りのお兄さんが、カフェにいる自分を見つけ、声をかけてきたときは驚いた!外国に出たアイルランド人は同郷の者しか目にはいらないのだ(笑)


・一体この演劇は本当に価値があるのか?と、まだ専門家が議論していた時、はっきりとベケットの真価を認める事ができたのは刑務所の体験を持った役者だった。嘘ではない!マウントジョー監獄の囚人達による公開演劇、フリールの芝居を観た時ほど、この事を考えたことはない


・Here comes Philadelphia。主人公の息子が二人に分極化し、断絶した父親とのコミュニケーションを図る物語。新聞広告で集まった一般客に混じって、囚人達の両親や兄弟姉妹が注視する。幕は上がる。が、軽快なアイリッシュダンスも、役者達は不動のまま。顔を上げられない



・出獄後、疎外感を苛まれて刑務所に戻って来る囚人の話は日本と同じ。世界で例がない公開演劇は、彼らの社会復帰を助ける目的があるのだ。膠着した役者達の表情。しかし芝居が進行していくと、アイリッシュは乗ってくる。身体の躍動。芝居が引き出す驚くべき大きな力。他者になることの開放感だ


・芝居だ!芝居だ!刑務所なんて嘘。人間を隔てる場所なんか存在しない。舞台上の兄と姉を見上げると涙が溢れる。でも今夜は歓喜と誇りから。降りた幕が再び上がる。壇上に上がった女性プロデュサーが、うつむく役者達一人一人の手を握る。顔をゆっくりとあげさせる。判事登場、籤の贈物を配り始めたよ




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Γshort story-;アイルランド編。panopticは、"全てが一目で見える、パノラマ的"の意で、植民地主義的な響きを持つ語だ。フーコが分析したパノプティコン(一望監視方式)の語源。このタイプの監獄はダブリンに現存し、英国のアイルランド支配の象徴として博物館となっている。

監獄の内部は寒い。独房の中で凍え死んだ囚人が多かったという。パノプティコンの中では、仮に監視者がいなくとも、中央の塔からの光線(実際は天井からの光線)があるかぎり囚人は監視者の存在を意識せざるを得ない。善と英国を表す光だ。囚人は温かさを求めて天井ばかり見ていたはず。なんて残酷な話だ。

 この原理は規律・矯正型の権力技術として近代社会全域に応用されている。ゴダール「パッション」は労働者をこのタイプの囚人の如く描いている。シェークスピアのテンペストは、このキルメイナム監獄を舞台にして上演された。まさに幽閉の場所だが、事実アイルランドがモデルだったという説アリ・・・

 島の妖精はプロスペローから言葉を教わった結果、主人に従属する奴隷状態になってしまう。母を異教として排除する。これは、英国が現地住民の言葉・宗教・土地を奪った歴史とぴったりと対応するのだ。アベー劇場で観劇した時、難破船の旗は緑色(アイルランドを表す)。驚いたのは、ミランダは農婦みたいだった。


 キルメイナム監獄は アイルランド独立の指導者達が処刑された神聖な場所だ。私があえて撮影した写真を、アイリッシュの女性達に見せて自由な感想を言って貰った。「この国の女性達はここにすんでいる!」という意見は衝撃的だった。男性原理の天皇制のもとで抑圧される日本の女性達と全く同じだ



・ポストコロニアル的状況。例;レイプされた少女達の自殺を防ぐ為に、中絶禁止緩和を問う国民投票があった。エスタブリッシュメントの政府は中絶賛成を反道徳と非難。国民の支持を回復。実は、経済政策の破綻を狡猾に隠蔽するプロパガンダ

・嘗て王立映像博物館にソビエトの移動映画館、即ち列車が展示されていた。エイゼンシュタインのプロパガンダ映画を中で上映し、文盲の民衆に革命の意義を伝えた。ボルシェビキの兵隊に扮した英国女性が弁士だった。Field Dayと呼ばれたアイルランドの草の根の演劇活動を知っているだろうか?

・1972年に、デイリーの住民達は公民権のデモをを展開した。英国軍が丸腰の民衆を射殺する「血の日曜日事件」が起きた。貧しい国は自前の公共メディアを持てない。英国BBCは真相を伝えない。何かが起きているはずだが、皆知る事ができないのだ。Field Dayが世論形成の役割を引き受けた


・Field Dayは紛争地ディリーへ行き演劇と公開討論を組織した。フリール「トランスレーション」は、アイルランドの歴史・を問題提起した。幹部達は公平な見地に立つ為に、カトリック3人とプロテスタント3人で構成された。西部の僻地へも行った。この活動を注目したのがサイードとバレンボイムだ




・アメリカ人観光客は無邪気に、妖精はどこで会えるのか?ときくと、アイルランド人はむかついていた。雪が降らない国ですが、ヒューストン監督の映画「ザ・デット」の雪のシーンが有名。人間を自然に還元した描写手法に文化的偏見を読み取る映画研究者もいる

・ベケット「クラップスのラストテープ」で、アイルランドのウィクロー山の描写がある。訪ねると、数々のプロテスタント教会がうち捨てられている。ドアの前に「売り出し」の立て札がかかる。人間が来なくなれば宗教は意味がない。永遠の家は存在しない。君が代をおしつけても永遠の国になる訳じゃない


・通観妄想とはなにか?美しい計画に魅せられている人は全て、通観幻想の被害者。計画の見せかけの明快さは計画者が自分の知らない事実をすべて捨象したからということを忘れている。日本人は大抵ダブリンのバス停の前で苛立つが、アイルランド人なら、時刻表通りに物事が進行すると夢にも思わない
では、バスはどうなったのか?ダブリンでは色々な事が起き得る。例えば、乗車客の財布をひったくったスリを考えよ。逃げそこない、中央の出口ドアにはさまれた、としよう。運転手が罰としてスリの尻を蹴っ飛ばしたら、その勢いで外に押し出してしまった。運転手は追いかけると、1時間も運転手不在のバス。実存のバスだ

・ジョーダンはアイルランドの独立系監督達の成果を取り込んだ監督。が、ハリウッド時代の映画は歴史の歪曲の極み、の声も。メディア研究ルークギボンは、IRAは逆にそのステレオタイプのイメージを輸入し、政治プロパガンダを展開していると警告した


・ロンドンの配管工、ユダヤ人の友達から、Mの表記が本来、エジプト象形文字とヘブライ文字に起源があることを学んだ。「蛇」の形をしたM。偉大な言語発明者、セム族の人々は、「蛇」をMの音で発音したらしい。MiMi(耳)という言葉がお気に入りだった。イデッシュ語とはなにか、とたずねた
 イデッシュ語とはなにか?ときく。と、お前は既にイデッシュ語話者だという。びっくりした。イスラエル人の俺と日本人のお前は、「MiMi」というイデッシュ語を一語を共有しているからだという。意味は蛇だ。もう一度びっくりした。その柔軟な発想に。なんて流動的で、家族みたいな言葉なのか
 イデッシュ語とはなにか?18世紀にはヨーロッパのユダヤ人の大多数がイデッシュ語だけを話すようになっていた。ヘブライ語は学者の言語、そして祈祷の言語となっていた。イデッシュ語は流動的で、厳格な規則のない民族語であった・・英雄的な抒情的な表現や風刺にはぴったりである。ディモント
 イデッシュ語は曖昧さを表現することはできないが、感情移入にもってこいだ。ダンテがイタリア語を、チョーサーが英語を、ルターがドイツ語を整え形づけたように、ハスカラーの作家達もイデッシュ語を整え形づけた。いまの私にとって、英語は思考のヘブライ語、日本語は感情のイデッシュ語なのか?


・ジョンフォードもアイリッシュ系米国人。祖先の事を調べようと、当時(確か)二百万円の軍資金を、grandfather?が関わっていたIRAに提供しました。 アイルランドの裏切りのテーマは大変有名で、ベルトリッチのインスピレーションを搔き立てました。暗殺の森


・理性の笑みの時代、多様な才能が集まる場、 十七世紀の女性達が主催したサロン文化。バベルの塔という陰口も、ジョイスのインターナショナル・シンポジウムは文化サロンの継承である。大物パトロン、ユダヤ人Fritz Sennの警鐘の言葉;探求を続けるためには、解決するな!




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