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zoom RSS 文学・大杉栄  2  本多敬

<<   作成日時 : 2011/01/25 07:52   >>

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憲兵Cは隊長にきいた;甘粕大尉は一体どんな方ですか。

「ふむ、大尉はお偉い方だ。大川中島の戦で活躍した上杉謙信のもとで功を成した武将のご子孫ときいている。」
と、隊長は説明し始めた。皆関心をもって話を聞く。当時先祖の話が非常に重みを持っていたからであるが、隊長は皆の不安を鎮めたいと考え、話を進める。

「大尉は少年時代、軍人になって靖国神社に祀られることだけを願っていた様な、純粋な愛国少年だった。しかし陸軍戸山学校で落馬し、その怪我のせいで歩兵としての前途を諦めてしまったという話だ。」

憲兵Cは言った; ああ、それで、 憲兵隊に入ってこられたわけですね。

「そうだ。大尉は温和な方で、なかなか教養も高い。ことに、好きな映画の話になると、止まらなくなってしまわれる。憲兵隊のことしか知らない我々に、外の世界のことに目を向けさせてくれる、というわけだ。」

憲兵Dはきいた; 「赤い帽子の女」みたいな、風紀を乱す映画の話も話されますか。

「フランス映画は必ず観ていらっしゃる。社会主義の文献をよく読み、フランス語にも堪能らしい。ジャズのレコードを集め、邦楽なら浄瑠璃を好み、社交ダンスの名手。酒ならウイスキー。タバコはエアシップ・・・」

憲兵Bは隊長の話を遮った;隊長、目的地に到達できるでしょうか。うまく大杉を捕まえられないんじゃないでしょうか。
憲兵Dは言った;大杉には家族がいるんですか。

「一応、妻と娘がいることになっているが、体裁だけだ。アナーキストを名乗る連中は家族制度を否定している。実際に大杉には何人もの女がいて、その一人から刺されるという事件も起きた」


憲兵Dは言った;なんてやつだ。家族の情が無いから、愛国精神がないんだ。とっ捕まえてやるぞ!

 
「隊長の得意な話、センチコガネの話をしてくださいませんか。隊長のお話を聞けば、皆の気持ちもすこしでも落ち着くと思うのです。」、と、憲兵Cは隊長に懇願した。

憲兵Aはきく;なんだ、そりゃ、センチコガネというのは。呑気な奴だな 

憲兵Cは言った;話を聞いたことがないのか。ああ、たしかお前は今年この金沢の部隊に入ったばかりだから、知らないのだな。

憲兵Bは説明する;センチコガネはふん虫のことだ。地上のふんを片付けてくれる虫で、もし世の中にいなかったら、大変だ、地上はふんの山だらけになってしまう。くそ虫って呼ばれて嫌がられているけれどもな。

憲兵Cは楽しげに言った; ミツバチマーヤの話の中では、ふんの掃除屋はコオロギのイソフィーからもとてもばかにされていた。

憲兵Dは呆れた調子で言う;東京が瓦礫の山になっちまった。まさに、そのふんの山のようなものだ。いますぐに、くそ虫のような奴が必要だぜ。


憲兵Aは言った;モンゴル人は憎しみを込めて我々のことを「くそ虫」と呼んでいたっけ。

憲兵Bは言った;なにを言うか。モンゴルの民衆は自分達の祖国をロシアと中国の支配から解放してくれた大日本帝国に、心から感謝の意を表している。

憲兵Aは納得しない; そうかな。もし本当に感謝されているのだったら、じゃなぜ、我々は「くそ虫」なんだ。おかしいじゃないか。

憲兵Bは言った; 一部の民族主義者達がそう言っているだけだ。隊長、何とか言ってください。我々の仕事には大義があったと。

「ああ、そうさ。日本語のおかげで、アジアの民衆は互いに意思を伝え合うことが可能となるのだ。それまでは民衆はバラバラで、結局そのせいで西欧列強による好き勝手な支配を許してしまったんだ。」


「しかし、いつまでこのような事を続けるつもりなのですか。」と、憲兵Aが言った





文学・大杉栄

No12憲兵Cは隊長にきいた;甘粕大尉は一体どんな方ですか。「ふむ、大尉はお偉い方だ。大川中島の戦で活躍した上杉謙信のもとで功を成した武将のご子孫ときいている」。皆関心をもって話を聞く。当時先祖の話が非常に重みを持っていた。隊長は皆の不安を鎮めたいと考え、話を進める。

No13「大尉は少年時代、軍人になって靖国神社に祀られることだけを願っていた様な、純粋な愛国少年だった。しかし陸軍戸山学校で落馬し、その怪我のせいで歩兵としての前途を諦めてしまったという話だ。」憲兵Cは言った; ああ、それで、 憲兵隊に入ってこられたわけですね。

No3「そうだ。大尉は温和な方で中々教養も高い。ことに、好きな映画の話になると、止まらなくなってしまわれる。憲兵隊のことしか知らない我々に、外の世界のことに目を向けさせてくれる、という訳だ」憲兵Dはきいた;「赤い帽子の女」の様な風紀を乱す映画の話も話されますか

No14「フランス映画は必ず観ていらっしゃる。社会主義の文献をよく読み、フランス語にも堪能らしい。ジャズのレコードを集め、邦楽なら浄瑠璃を好み、社交ダンスの名手。酒ならウイスキー。タバコはエアシップ・・」

大杉栄No15と、憲兵Bは隊長の話を遮った;隊長、目的地に到達できるでしょうか。うまく大杉を捕まえられないんじゃないでしょうか。憲兵Dは言った;大杉には家族がいるんですか。「一応、妻と娘がいることになっているが、体裁だけだ。アナーキストを名乗る連中は家族制度を否定している。

No16・・実際に大杉には何人もの女がいて、その一人から刺されるという事件も起きた」憲兵Dは言った;なんてやつだ。家族の情が無いから、愛国精神がないんだ!必ずとっつかまえてやるぞ!!

No17「隊長の得意な話、センチコガネの話をしてくださいませんか。隊長のお話を聞けば、皆の気持ちもすこしでも落ち着くと思うのです。」、と、憲兵Cは隊長に懇願した。憲兵Aはきく;なんだ、そりゃ、センチコガネというのは? 
呑気な奴だな・・・


No18憲兵Cは言った;話を聞いた事がないのか。ああ、たしかお前は今年この金沢の部隊に入ったばかりだから、知らないのだな。憲兵Bは説明する;センチコガネはふん虫のことだ。地上のふんを片付ける虫で、もし世の中にいなかったら、大変だ、地上はふんの山だらけになってしまう。

No19くそ虫って呼ばれて嫌がられているけれどもな。憲兵Cは楽しげに言った; ミツバチマーヤの話の中では、ふんの掃除屋はコオロギのイソフィーからもとてもばかにされていた。憲兵Dは呆れた調子で言う;東京が瓦礫の山になっちまった!?まさに、そのふんの山のようなものだ。

No20・・今すぐに、くそ虫のような奴が必要だぜ。憲兵Aは言った;モンゴル人は憎しみを込めて我々の事を「くそ虫」と呼んでいたっけ。憲兵Bは言った;何を言うか!モンゴルの民衆は自分達の祖国をロシアと中国の支配から解放してくれた大日本帝国に、心から感謝の意を表している!

No21憲兵Aは納得しない;そうかな?もし本当に感謝されているのだったら、じゃなぜ、我々は「くそ虫」なんだ。おかしいじゃないか。憲兵Bは言葉を返した。;一部の民族主義者達がそう言っているだけだ。馬鹿なことを言うな!!


No22隊長、何とか言ってください!我々の仕事には大義があったと!!。「しかし、いつまでこのような事を続けるつもりなのですか?」と、憲兵Aが侮蔑した調子で言った


No23「ああ、そうさ。日本語のおかげで、アジアの民衆は互いに意思を伝え合うことが可能となるのだ。それまでは民衆はバラバラで、結局そのせいで西欧列強による好き勝手な支配を許してしまったんだ。」

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