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zoom RSS 文学・大杉栄  7  本多敬

<<   作成日時 : 2011/01/27 20:41   >>

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第二部



伊藤野枝と新聞記者が向かい合って座っている。新聞記者が伊藤野枝の言葉をタイピングしている。

「野枝さん、よかったら、どうぞお座り下さい。最初から、状況をお話いただけますか。」と、新聞記者は言った。

野枝は動揺している。椅子に座る。 「栄さん達が捕まった。憲兵達が来て、連れて行ってしまった。」

「憲兵隊どもが大地震の混乱に乗じて、大杉さんを逮捕しましたか。おかしいな。新聞社に対して、警察庁からの発表がなにもありませんでしたがね。野枝さん、お気持ちを察します。一体、いつのことですか。」と、新聞記者はきいた。
「お昼過ぎです。どうしよう。栄さん達が捕まった。」と、野枝は訴えた。

「いま、奥さんの言葉を書きとっていますから。なぜ政府は黙っているんだろうか。大杉さんは、本当に逮捕されたんですか。なにかの間違いじゃありませんか。」

「私は自分の目で見たんですよ。政府と警察よりも、どうか、私の言葉を信じてください。」

新聞記者は野枝にきいた。 「憲兵隊を何人見ましたか。」

「大勢でした。」

「正確には何人でしたか。」

「分らないわ。六人、七人、いえ、もっと多かったかもしれない。」

「落ち着いて思い出してください。確かに、憲兵隊でしたか。」と、新聞記者は言った。

「だから、栄さん達が捕まった、と、言っているじゃないの!」と、野枝は繰り返した。

「陸軍の可能性もありますし。確かに、軍ではなかったのですか。内務省警保局の仕業かもしれない。大杉さんに裁判所の令状を示しましたか。どんな制服だったか、はっきりと覚えていませんかね。」

伊藤野枝は「分かりません・・・」と答えた。

「分からない、では困りますね。警察でしたら令状を示すはずです。」と、新聞記者は苦笑いした

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