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zoom RSS 文学・大杉栄  8   本多敬

<<   作成日時 : 2011/01/28 15:12   >>

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「分からない、では困りますね。警察でしたら令状を示すはずです。」

野枝は状況を説明した。「本当に突然の事で、はっきりと覚えていないんです。家の外でトラックのエンジン音が聞こえたと思ったら、大勢の人達がどかどかと侵入して来て、栄さんを取り囲んで連れて行ってしまったんです。」

新聞記者はきいた。「なんの目的で?」

野枝は立ち上がった。「そんな事分からない。とにかく、栄さん達が捕まってしまった。」

新聞記者は短い溜息をつき、野枝に説いた。「それじゃ、なにも分からないですよ。野枝さん、あなたの言うことを信じたいのですが、なにせ、政府からの公式の発表がないので。今のところ、警察からの情報もありませんしね。どうか、頭を整理して論理的に喋ってくださいませんか。一体何が起きたのですか。」

「栄さん達が捕まった。憲兵達が来て、連れて行ってしまった!」

「逮捕の容疑は?」

「分りません」

新聞記者はきいた。「なんて、令状に書いてありましたか。」

伊藤野枝は首をふった。 「令状。そういうものがあったか覚えていません。あっという間のことでしたから。どうしよう。栄さん達が捕まってしまった。」

「野枝さん、ここに、なにしにいらっしゃったのですか?」と、新聞記者は問いただした。

「だから、憲兵達が来て、連れて行ってしまったといっているじゃないですか。なぜ、あなたはわたしの話を聞いてくださらないの!」

「ええ、さっきから聞いていますよ。こうして、あなたの話を記事にしようとしています。大杉さんは手錠をかけられたのですか。それともロープなんかで縛られていましたか。捕まった事を、どのように証明なさいますか。」

「証明・・?」




文学・大杉栄
(第二部)

57伊藤野枝と新聞記者が向かい合って座っている。新聞記者が伊藤野枝の言葉をタイピングしている。「野枝さん、よかったら、どうぞお座り下さい。最初から、状況をお話いただけますか。」と、新聞記者は言った。野枝は動揺している。椅子に座った。

58「栄さん達が捕まった。憲兵達が来て、連れて行ってしまった」。「憲兵隊が大地震の混乱に乗じて、大杉さんを逮捕しましたか。おかしいな。新聞社に対して、警察庁からの発表が何もありませんでしたがね。野枝さん、お気持ちを察します。一体いつの事ですか」と、新聞記者はきいた。

59「お昼過ぎです。どうしよう。栄さん達が捕まった。」と、野枝は訴えた。「いま、奥さんの言葉を書きとっていますから。なぜ政府は黙っているんだろうか。大杉さんは、本当に逮捕されたんですか。なにかの間違いじゃありませんか・・・?」


60「私は自分の目で見たんですよ。政府と警察よりも、どうか、私の言葉を信じてください」。新聞記者は野枝にきいた。「憲兵隊を何人見ましたか?」。「大勢でした」。「正確には何人でしたか。」「分らないわ。六人、七人、いえ、もっと多かったかもしれない・・・」


61「落ち着いて思い出してください。確かに、憲兵隊でしたか。」と、新聞記者は言った。「だから、栄さん達が捕まった、と、言っているじゃないの!」と、野枝は繰り返した。「分からない、では困りますね。警察でしたら令状を示すはずですから」と、新聞記者は苦笑いした。 

62「陸軍の可能性もありますし。確かに、軍ではなかったのですか。内務省警保局の仕業かもしれない。大杉さんに裁判所の令状を示しましたか。どんな制服だったか、はっきりと覚えていませんかね。」伊藤野枝は「分かりません・・・」と答えた。


63「分からない、では困りますね。警察でしたら令状を示すはずです」。野枝は説明した。「本当に突然の事で、はっきりと覚えていないんです。家の外でトラックのエンジン音が聞こえたと思ったら、大勢の人達がどかどかと侵入して来て、栄さんを取り囲んで連れて行ってしまったんです」


64新聞記者はきいた。「なんの目的で?」。野枝は立ち上がった。「そんな事分からない。とにかく、栄さん達が捕まってしまった」。新聞記者は短い溜息をつき、野枝に説いた。「それじゃ、なにも分からないですよ。野枝さん、あなたの言うことを信じたいのですが、・・・


65・・なにせ、政府からの公式の発表がないので。今のところ、警察からの情報もありませんしね。どうか、頭を整理して論理的に喋ってくださいませんか。一体何が起きたのですか」。「栄さん達が捕まった。憲兵達が来て、連れて行ってしまった!」


66「逮捕の容疑は?」。「分りません!」。新聞記者はきいた。「なんて、令状に書いてありましたか。」伊藤野枝は首をふった。「令状。そういうものがあったか覚えていません。あっという間のことでしたから。どうしよう。栄さん達が捕まってしまった」。



67「野枝さん、ここに、なにしにいらっしゃったのですか?」と、新聞記者は問いただした。「だから、憲兵達が来て、連れて行ってしまったといっているじゃないですか。なぜ、あなたはわたしの話を聞いてくださらないの!」


68「ええ、さっきから聞いていますよ。こうして、あなたの話を記事にしようとしています。大杉さんは手錠をかけられたのですか。それともロープなんかで縛られていましたか。捕まった事を、どのように証明なさいますか。」「証明・・?」







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